釣行 F.Stuff 朝賀2

2009年9月7日~8日  「ソロ」   文・写真   F.Stuff 朝賀

 ソロ。単独行の事である。今回は沢での日暮れの雰囲気を独り占めする、贅沢な計画を立てた。選んだのは新潟県の妙高にある乙見湖(笹ガ峰ダム)へ流れ込む川のうちの一つ、真川の上流。流程が長く、途中何本もの枝沢を伸ばしている。事前の調べで、本谷添いに登山道が付いている事から、アプローチはしやすい。ゆえに釣り人は少なくはないかも知れない。 と言う事で一泊し、日帰りでは届かないエリアで釣りをする計画だ。
 前日。22時に店が終わると同時に車に乗り込む。2時半過ぎに杉ノ沢林道の真川駐車場へ到着。長い道程だった。すぐに車の中で仮眠する。
 1日目。午前7時。真川の右岸から入る登山口を探す。なかなか見つからなかった。堰堤工事の為の重機用道路の脇に、目印の赤テープを見つけたのは8時を過ぎた頃だ。まったく……とんだロスタイムだ。登山口へ入る。登山道はしばらく平坦だが、ぬかるんでいる場所が多く、更に熊の雰囲気がある。滝沢との合流地点を境に急登が出始める。途中、ヘツリに近い部分もあり気を付けなくてはならない。金山谷の合流地点を過ぎ、裏金山谷の出合いに着いたのは11時過ぎ。やはり最初のロスタイムは痛い。真川本谷と裏金山谷の水量は2:1で、予定では裏金山谷を遡行するつもりだったのだが、どう見ても本谷の方が魚が居そうだ。迷わず本谷を選んだ。いよいよ釣り始める。
 ポイントは豊富だが、予想外に小場所が多い。最初のイワナは25~26センチの雌だった。良いポイントだけを選んで打ち、釣り上がる。途中右岸側に草が絨毯の様になった幕営適地を見つけた。「こんな所で泊まりたい」を形にした様な物件である。ここを泊まり場と即決し、ザックをデポしてタックルと雨具だけを持って再び釣る。出合いから1時間ほどの辺りからイワナの反応が変わり、尺上が揃い始めた。どうやらこの辺りが日帰り組の限界点の様だ。更に2時間強釣り上がり、すっかり心が満タンになった為、納竿する。
 幕場まで戻り、水を勢い良く飲む。どんなに旨い料理でも、渇いた時に飲む水にはかなわない。ツェルトを張り、薪を集め火を起こすとやる事がなくなった。時刻は午後4時前。良い天気だった。服が汗臭くなっていたので沢の水で水洗いして岩の上や流木の枝で干す。アールグレイの紅茶をいれ、岩に腰を下ろし空に目を向けると、真っ青な空に小さな雲が駆け足をしている。思えばこんなゆっくりした沢旅は久しぶりだった。腹が減っていた。随分早いが晩飯の支度をする。カレーうどんと白米、胡瓜の漬物に芋づるのきんぴら。料理はあまり得意ではないが、味は環境に助けられた。湯を沸かしお湯割りを作った。沢を流れる水の音、焚き火の匂いと遠くに見える火打山の稜線を肴に酒をゆっくり呑(や)る。沢で日が暮れてゆく感じが私は好きだ。色々な事が頭の中に浮かんで来ては消えた。どんな事も大した事はないと思えてしまう。 飲み始めが早かったせいか、20時を前に睡魔に襲われた。自然に目が覚めたのは3時半。十分な睡眠をとる事が出来た。空には薄い雲が一面を覆っていた。消えた焚き火をかき回して火を起こし直し火が安定するまで、僅かに残った焼酎を沢の水で飲んだら、もう一度シュラフに潜り込んだ。
 2日目。起きたのは午前6時前。ツェルトを畳み、焚き火の火を再生し、食事の準備をする。雲一つ無い快晴になっていた。実に気分が良い。今日は下山するのみ。時間はたっぷりある。来る時にスルーして来た金山谷や途中の本谷もチェックしながら帰ろう。そんな事を考えながら飯を食う。食後のコーヒーをゆっくり飲み終えると、焚き火の後始末をし出発する。金山谷の合流地点で足を止めた。「この谷にもイワナが居るのだろうか?」。登山道から少し上流で沢は右に曲がる。その辺りから釣りをしてみる。一投目で食って来た。大きくはないが、ルアーを見るのが初めてだと言った感じのリアクションは嬉しいものだ。その上でもう一匹釣り上げた後、下山を再開。滝沢との合流点から本谷側をチェックしてみるつもりが人の足跡が目に入り、結局釣りはしなかった。岩の上に座り、太陽を身体中で呼吸しながら水を飲んだ。
 上空をヘリコプターが飛び回っている。「誰か遭難したのだろうか……」。今年は山岳事故が多い。天候の不順や、初夏に封切られた映画の影響で俄かにハイカー等が増えたのが要因として考えられているようだ。昼前には車に戻って来ていた。
 今回は天候にも恵まれ釣果も良く、全てが予定通りだったと言っていい。しかし相手は【自然】。時には厳しい顔も見せる。想定できる事態は、起こりうる可能性があるのだと認識し、対処法を頭に入れておかなくてはならない。山では、ちょっと臆病なくらいがちょうど良いと経験上、私は思う。そしてもう一つ、敬意を持って【楽しむ事】だ。

F.Stuff朝賀0201
F.Stuff朝賀0202F.Stuff朝賀0203F.Stuff朝賀0204
F.Stuff朝賀0205F.Stuff朝賀0206F.Stuff朝賀0207
F.Stuff朝賀0208F.Stuff朝賀0209F.Stuff朝賀0210
F.Stuff朝賀0211F.Stuff朝賀0212F.Stuff朝賀0213

写真をクリックすると拡大します。


 今釣行のタックル紹介
 Rods  TENRYU Cierry CR-47-5
            (tuned by T-Craft)
 Reel  DAIWA EXSIST 1003H 改
 Line  VARIVAS S.T.A VEP 4lb +
       TROUT SHOCK LEADER 6lb
 Lure  シシャモルアーズ 180 TYPE WFM
       (テスト品)